太宰府天満宮から車で数分のところに観世音寺という寺院があります。
この観世音寺は天智天皇が、母君斉明天皇の冥福を祈るために発願されたもので、聖武天皇の天平18年(746年)に完成しました。
古くは九州の寺院の中心的存在で、多くのお堂が立ち並ぶほどでしたが、現在は江戸時代初めに再建された講堂と金堂の二堂があるのみです。

日本最古の梵鐘 の鐘音
901年に大宰府に左遷されてから、903年に逝去されるまで謫居された榎社にいた菅原道真公の詩に
「都府楼は纔(わず)かに瓦色を看る 観音寺は唯(ただ)鐘声を聴く」
とあります。
上記の詩の中で詠まれた「鐘」とは観世音寺の梵鐘のことです。現在この梵鐘は「日本の音風景100選」に選定されています。1000年以上昔の人々も聞いた鐘の音が現代の太宰府市の街にも鳴り響くというのは何ともロマンチックです。



観世音寺の梵鐘
この梵鐘は銅製の鋳造によるもので、竜頭という吊り鐶部分には猛々しい双龍が、鐘身の部分は忍冬唐草紋が、撞き座には新羅系に似た蓮華紋が施されています。

日本最古の観世音寺の梵鐘
観世音寺の梵鐘と「兄弟鐘」といわれる鐘が京都府の妙心寺にあります。
この二つの鐘は大きさは異なるものの、同じ挽形から作った鋳型で製作されたものとされ、妙心寺の鐘に銘文があり、それによると、698年に現在の福岡県粕屋郡で作られたものと分かっています。
観世音寺の鐘も妙心寺の鐘と同時期に製作されたものと考えられており、観世音寺の梵鐘は妙心寺の鐘よりも古いとする見解が有力であり、現存する日本最古の梵鐘です。
観世音寺の除夜の鐘
1300年余の大宰府の歴史を見守ってきた梵鐘は、今も現役です(兄弟鐘である妙心寺の鐘は現在法堂に安置されています)。
大晦日には除夜の鐘を撞いて煩悩を払うという行事がありますが、日本最古の梵鐘を撞くために多くの人が訪れます。鐘を撞くためには、整理券が必要になり午後10時30分に配られます(先着順70~80名程度)が、午後6時頃には既に並んでいる方もいらっしゃいますので、どうしても撞きたい方は早めに並ばれるのをお勧めします。
日本最古の梵鐘を撞ける経験というのも貴重な経験です。
観世音寺は12月31日にはライトアップされていますので、太宰府天満宮に初詣に行く前に除夜の鐘を聞くというのも良い体験になると思いますよ。

住所 〒818-0101 太宰府市観世音寺5-6-1
西鉄太宰府駅より徒歩20分 ・西鉄五条駅より徒歩10分
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